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すると、急に兄の顔に変化が生じた。みるみる真っ青になっていき、冷や汗をだくだく 流して、ついには持ってる双眼鏡を落とした。僕は、兄の変貌ぶりを恐れながらも、 兄に聞いてみた。『何だったの?』 兄はゆっくり答えた。 『わカらナいホうガいイ……』 すでに兄の声では無かった。兄はそのままヒタヒタと家に戻っていった。 僕は、すぐさま兄を真っ青にしたあの白い物体を見てやろうと、落ちてる双眼鏡を 取ろうとしたが、兄の言葉を聞いたせいか、見る勇気が無い。しかし気になる。 遠くから見たら、ただ白い物体が奇妙にくねくねと動いているだけだ。少し奇妙だが、 それ以上の恐怖感は起こらない。 しかし、兄は…。よし、見るしかない。 どんな物が兄に 恐怖を与えたのか、自分の目で確かめてやる!僕は、落ちてる双眼鏡を取って覗こうとした。 その時、祖父がすごいあせった様子でこっちに走ってきた。僕が『どうしたの?』と尋ねる前に、 すごい勢いで祖父が、『あの白い物体を見てはならん!見たのか!お前、その双眼鏡で見たのか!』 と迫ってきた。僕は『いや…まだ…』と少しキョドった感じで答えたら、祖父は『よかった…』 と言い、安心した様子でその場に泣き崩れた。僕は、わけの分からないまま、家に戻された。 帰ると、みんな泣いている。僕の事で?いや、違う。よく見ると、兄だけ狂ったように 笑いながら、まるであの白い物体のようにくねくね、くねくねと乱舞している。僕は、 その兄の姿に、あの白い物体よりもすごい恐怖感を覚えた。 そして家に帰る日、祖母がこう言った。『兄はここに置いといた方が暮らしやすいだろう。 あっちだと、狭いし、世間の事を考えたら数日も持たん…うちに置いといて、何年か 経ってから、田んぼに放してやるのが一番だ…。』 僕はその言葉を聞き、大声で泣き叫んだ。以前の兄の姿は、もう、無い。また来年実家に 行った時に会ったとしても、それはもう兄ではない。何でこんな事に…ついこの前まで仲良く 遊んでたのに、何で…。僕は、必死に涙を拭い、車に乗って、実家を離れた。 続く
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